「和」という言葉は、日本そのものを表したり、純日本的なものに使われることが多く、和紙、和服、和菓子など、伝統的なものに付いていて、「和」それ自体が文化的概念となっている日本語です。また、日本的というほかに「和らげる」「調和」「平和」などの意味があります。「和」は、日本の哲学・文化において、日本人の精神性をもっとも象徴するものとしてとらえられています。
7世紀ごろよりこの極東の島の人々は、この土地を「日本」および「和」と自称し、それ以降「和」の精神を大切にしてきました。西暦604年に聖徳太子が制定した日本で最初の成文法「十七条の憲法」の第一条に「和をもって貴しとなす」とあるのはよく知られています。「人々がお互いに仲良く、調和をしていくことが最も大事なことである」という教えと考えられています。
さて、「和心」という言葉、そのまま訳すと心を和らげる、または和らいだ心、と読めます。普通に考えると、聖徳太子が言ったように、「人々の心」がお互いに調和することを示した言葉と受け取ることができます。禅の視点で見てみると、「和」とは、一つに融け合い一体となることを表し、その対象は、人間だけに限らないと私は思っています。
つまり「和心」とは、坐禅を通じてこの世の根本的な平等性を確信し、しかし厳然とある差別を敬い、世界の全てと自分とが一体であるという現実を、身をもって生きることをいうのだと理解しています。
1000年を優に超える長きにわたり、この国そのものを表す言葉として、日本の芯に据えられた「和」という言葉。
新たな年の始まりに、改めて心に据えたい言葉です。 品部 東晟
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